足の痛み・足のこりとはり
大腿部の軟部組織損傷
大腿四頭筋損傷
大腿四頭筋(※足の前ももの筋肉。)は強力な筋肉であり、もっとも肉ばなれを起こしやすいものは、大腿直筋と中間広筋である。
<発生機序>
大腿四頭筋が適切にウォーミングアップされず、柔軟になっていないときに、突然力強く収縮したり、伸長されたりした場合に発生することが多い。
<症状>
大腿四頭筋に肉ばなれが発生した場合、ただちに膝くずれが起きたり、裂けたりした感じを自覚する。大腿四頭筋肉ばなれを損傷の程度によって1度~3度に分類すると、次のようになる。第1度(軽度):腫脹は軽度で、受傷部の直上に約1~2cm程度の範囲に圧痛をもった広がりがある。手当てをせず放置しておくと、筋緊張、腫脹、圧痛が急激に増大する。第2度(中程度):腫脹、筋緊張および圧痛が第1度よりも激しい。第3度(重度):触診により、筋肉内に陥凹部を触れる。これは筋肉が約5~8cm程度の幅で実際に断裂していることを意味する。また受傷後24~48時間内に著明な皮下出血をみる。
<診断法>
新鮮例の初期治療は第一に出血の阻止である。そのために局所の安静と固定を行って、積極的に冷罨法(れいあんぽう※)をしなければならない。症状が強度の場合は歩行を禁止する。約5日後には徐々に温熱刺激により血液循環を促進させ、出血の吸収を図ることが必要である。また筋力低下の防止のためには軽い自動運動を行う。
※冷罨法:身体の一部を覆い、寒冷刺激を与えることで鎮痛や消炎効果を得る治療法。冷たい冷湿布を貼る等。
<治療法>
※ハムストリングス損傷に準ずる。
ハムストリング損傷
ハムストリングスは大腿の後部にあり、膝関節を屈曲させる筋肉である。この筋の肉ばなれは、その大部分が筋、腱移行部、すなわち大腿後部の上1/3部での損傷であり、腱が骨盤より剥離したり、膝関節付近において損傷することも、ごくまれながらある。
<発生機序>
主な原因については大腿四頭筋と同様であるが、それに付加するものとして、次のものがあげられる。ハムストリングスは大腿四頭筋の拮抗筋である。したがってハムストリングスがある方向に働くと、大腿四頭筋は反対方向に働く。この大腿四頭筋はハムストリングスの約1.5倍の筋力を有するといわれており、この二つの筋力の差が大きい人ほど、ハムストリングスの肉ばなれを起こしやすい。
<症状>
大腿四頭筋と同様に1度~3度に分類し、損傷の程度もこれと同様である。なお、前述分に付加するものとして、以下に列挙する。第1度(軽度):多少の不快感はあってもハムストリングスを完全に収縮させることができる。第2度(中程度):ハムストリングスを収縮させるのは困難である。第3度(重度):受傷後24~48時間で著名な皮下出血がみられ、長期間の治療を要する。
<治療法>
はり灸・指圧・カイロプラクティック・整体・ストレッチ・整復・骨盤矯正等により治療する。治療の第一の目的は出血をより少なくし、血腫形成を予防することである。第二の目的は、すでに出血し、血腫を形成したものに対して、できるだけ早く吸収させることである。受傷後、できるだけ早く冷水や氷水による冷罨法(れいあんぽう※)をすることが重要であり、さらに出血を防ぐ意味で、冷罨法の上から圧迫包帯を末梢部から中枢へ向かって巻く。これらの冷罨法んと圧迫包帯は症状により多少の変動があるが、原則として受傷後2~3日間で十分である。それ以上冷やしたり、圧迫したりしても意味がないばかりか、かえって血腫の吸収を遅らせる結果、受傷した筋群の循環障害を起こし、筋肉の萎縮や、機能障害を起こす原因となる。受傷2~3日後に腫脹が消退するとともに、手技療法などによって、局所の血液循環を促進させ、血腫の吸収を早めるとともに、筋肉の緊張をとる。筋の挫傷を軽視して、適切な治療を行わないと、骨化性筋膜炎などの合併症を起こすことがある。
※冷罨法:身体の一部を覆い、寒冷刺激を与えることで鎮痛や消炎効果を得る治療法。冷たい冷湿布を貼る等。
下腿部の軟部組織損傷
下腿三頭筋損傷
下腿部の肉ばなれは腓腹筋に多くみられるが、ヒラメ筋にも起こることがある。腓腹筋、ヒラメ筋は下腿三頭筋として、足関節を屈曲(底屈)し、距骨下関節で強い回外力を持つ。筋収縮時の短縮度合いが大きいことにより、歩行やジャンプする際、自転車に乗ったときなどに損傷されやすい。
<発生機序>
陸上競技などで、スタートダッシュや全力疾走の際に、突然筋肉の一部を強く引っ張るような激痛が走り、そのために疾走や跳躍ができなくなったり、競技能力が著しく低下する。陸上の短距離競争に圧倒的に多く、ハードル、中距離競争でもみられ、ラグビー、サッカーなどランニングを主とした競技中に多く発生する。発生要因として、筋肉の疲労や寒冷があり、走路不良などが誘因となる。
<症状>
筋の損傷部位に限局した圧痛と、軽度の腫脹、皮下出血があり、ときには硬結を触知できる。歩行、動作など、損傷した筋の自動的運動を行わせると、疼痛のため運動が制限され、抵抗を加えると疼痛が増強する。また、他動的に筋を伸長させると、損傷した部位に痛みを生ずる。
<治療法>
はり灸・指圧・カイロプラクティック・整体・ストレッチ・整復・骨盤矯正等により治療する。肉ばなれを起こすと筋膜下や皮下に血腫を形成し、それが吸収される過程で肉芽組織は伸縮性のない瘢痕組織に変わり、かたい索状のしこりが残って筋肉の機能が低下するようになる。したがって、肉ばなれの治療は出血をできるだけ少なくし、瘢痕組織の形成を予防することが第一である。受傷後数日間は冷罨法(れいあんぽう※)を施し、必要によっては絆創膏固定、厚紙副子固定を行い、弾性包帯または綿包帯によって損傷筋肉の安静を図る。漸次、手技療法などを施し、痛みのない範囲の自動運動を行わせる。患部の圧痛や運動時の疼痛を考慮しながら、患部以外の筋伸長などの運動療法を開始する。
※冷罨法:身体の一部を覆い、寒冷刺激を与えることで鎮痛や消炎効果を得る治療法。冷たい冷湿布を貼る等。
足底筋膜炎
過度の起立歩行を必要とする職業や、不慣れな人の場合に足底筋膜炎となり、その腱の踵骨付着部に疼痛が発生する。踵骨隆起内側突起部の荷重負荷による炎症であり、この部分の滑液包炎の場合もある。長距離歩行、底の柔らかすぎる履き物に変更した後などに起こる。歩行時に踵骨部全体に疼痛を訴えるが、圧痛は踵骨隆起内側突起部に限局する。靴に圧痛部をくり抜いた免荷(めんか※)下敷きや、スポンジパッドを入れる。
※免荷:荷重をかけないこと。